子育ての苦しみの原因は何なのでしょうか。
by いらすとや
第1弾の反響を受けて、3月27日に第二弾が放送されました。
この番組は、実験やデータにもとづいて、科学的に子育てを知ろう!というもの。
「何の地獄かと思った」というママさんのつぶやきは、まさに本音。
大反響を呼んだ第1弾では、
人間本来の子育てのかたちは「共同養育」
だということが明らかに。
おっぱいを飲んでいる赤ちゃんでも、他の人にあずけて、母親が仕事をします。
他の人がお乳をあげることもあります。
みんなで子どもを育てるのが、人間らしい子育て。
母親ひとりでは子供を育てられない。人間はそのように進化してこなかったのです。
その点では、7割の母親が孤独を感じている日本の社会は、非常に子育てしづらい環境だといえます。
第一弾の放送後には、解決法を科学で教えてほしい、という声も多く寄せられたそうです。
第二弾となる今回は、脳のしくみだけでなく、解決方法もいっしょに紹介されました。
前回を見逃した方はどうぞ
まとめてみた。NHK「ママたちが非常事態!?~最新科学で迫るニッポンの子育て~」
奇行だらけの子ども達
わが子の行動が不可解で、ママ達は苦しみます。不可解な行動は、未熟な脳のせい。
新生児は脳の大きさが新生児は400グラム、それに対して大人(成人)は1300グラム。
脳の大きさが3倍以上も違うのです。
他の生物では、ここまで脳の大きさが違うことはありません。
人間の赤ちゃんと大人は、別の生物といっても過言ではないでしょう。
脳が発達するにつれて、不可解な行動は減っていきます。
人見知り泣き
誰に預けても泣くという生後11カ月の女の子が登場。毎日会っているパパにも泣いてしまいます。
人見知り泣きは、生後半年頃から始まるといわれています。
赤ちゃんに知らない人とママの写真を見せる実験を行いました。
人見知りが始まる前の赤ちゃんは、ママの顔のほうをよく見ていました。
人見知り後の赤ちゃんは、知らない人の顔をよく見ています。
実は、生まれて間もない赤ちゃんは、ママ以外の人の顔がよくわからないのです。
人見知りをする → ママ以外の人間の顔が認識できるようになった、ということ。
成長の証なんですね!
知らない人の顔を見るのは、お母さんを中心に他人とつながっていきたいという気持ちの芽生え。
ところが、ここでも未熟な脳がネックになります…
目が合うと、さあたいへん。
動物の社会では、視線を合わせることは威嚇(いかく)になります。
もちろん人間も、知らない人と目があうと警戒心がわきおこります。
大人は脳が発達しているので恐怖心をおさえられますが、前頭前野が未発達の赤ちゃんにはそれができません。
威嚇されている!こわい! と赤ちゃんの脳は受け取って、泣き出してしまうのです。
友好的に見せようとして目をあわせるのは、赤ちゃんにとっては逆効果だったのです。
解決方法は…?
赤ちゃんの顔を見ないようにして、ママのほうを見て話すことです。ママと仲良くしている姿を赤ちゃんに見せましょう。
赤ちゃんの人間関係は、まずはママを通して作られるもの。ママと友好的な関係の人間だから、きみに害を与えたりしないよ、ということを伝えるのです。
ママとのつながりがない方(父方親族、パパの友人など)が赤ちゃんと会う場合には、積極的にママとのコミュニケーションを取るほうが、赤ちゃんに好感を持ってもらえるでしょう。
いやいや期の対処法
魔の二歳児、悪魔の三歳児…そんなふうに言われてしまう幼い子ども達。
前頭前野がまだ発達していない段階では、がまんすることができません。
この仕組みは第一弾でひもとかれました。
解決方法をもとめる熱い声に答えて、今回は「抑制機能の育てかた」が紹介されました。
トレーニングのしかた
怒って無理やり我慢をさせても、恐怖心や不安を感じさせるだけで、抑制機能を育てる効果はありません。自分から我慢するようにうながすことが大事。
子どもがわかりやすいルールを決めて守らせることです。
実際に行われているトレーニング方法は次のようなものです。
こども同士のペアを作り、耳と口のイラスト入りカードをひとり一枚渡します。
口のカードを持つ子が絵本の朗読をし(話し)、耳のカードを持つ子はしゃべらずに話を聞きます。
直接的にはだまって話を聞く訓練ですが、衝動を抑えることにつながります。
思わず話してしまった場合にはダメと言わないで、「あなたのカードは何だったかな? 耳よね。これは【聞く】人よね」と声かけをしていました。
動画の時間をきめて守る
NHK番組では、子どもの好きなネット動画を見せて、時間が来たら終わりにする、という約束をしました。時計がまだ読めなくても、時間を決めて守るトレーニングは可能です。
デジタル時計は使えません。かならず、アナログ時計を使用してくださいね。
大人が時計盤の数字に指をあてて「長い針がここに来たら終わりの時間だよ」と教えてあげるのです。(動画を見る前に)
砂時計をつかって「砂がぜんぶ落ちたら終わりだよ」と約束するのもいいですね。
番組では1回で成功していましたが、最初のうちは全然できない(守れない)と思います。
実はわが家(当時2歳)でも似たようなことをやっていました。
まったく守ることができず、「もっと見たい!」といつも泣き叫んでいましたっけ…
(効果があったのか、半年以上過ぎた今では、子ども自分で決めた場合の線引きは守るようになりました)
余裕があるときに少しずつやるだけで、トレーニングになります。
約束を守る動機づくり
達成感を与えること。守ることができたら、ほめてあげます。ごほうび(オモチャ、お菓子)を与えて、約束を守る理由にすることも悪くはないそうです。
気持ちを切り替える、という意味ではアリ。
いつまでもやり続けられない方法ですが、小さい子どもには理解しやすい・動機づけにしやすいので、初期のトレーニングには有効でしょう。
約束が簡単に守れる、ごほうびをもらうことそのものが目的になってしまった時には、他の動機づけに切り替えたほうがいいでしょうね。
長い目で見ると、がまんすることは、未来の計画をたてること。
男性の育児
パパゲストのひとり・恵俊彰さんは3~19歳(4児)のお子さんがいます。「育児をやってます?」と聞かれて、最初は「何もしてないんだよね~」と肩身狭そうに答えてました。
恵俊彰さんは、前回にも登場しているゲストで、同じことを話していました。
そういうタイプなんだな~と思っていたところ、今回は「何もできないから、抱っこだけはするようにしてる」と話が続きました。
「それが一番助かる!」と虻川美穂子さん(1歳児ママ)と眞鍋かをりさん(生後5か月児ママ)からは称賛の嵐。
すると、恵俊彰さんは姿勢をシャキッとさせて「育児やってます!」とドヤ顔をわざと作りました。
それはだめー!と女性陣からたしなめられて、再び低姿勢にもどる恵俊彰さん。
この番組、わかってるなあ…と感動してしまったやりとりです。
本題に戻ります!
インタビューをうけたイクメンパパ(2児)は「やって当然。2人がかりでやらないと、とてもできない」と語っていました。
でもママはパパにイライラしているそう…
原因は何でしょうか?
この家族が食事している様子をカメラで録画。
ごはんの用意ができると、ママは子供に目を配りつつ、食事を始めました。
こどもがくずります。
パパは気にせず食事。ママがこどもをあやし、ほとんど食べられないうちに、パパは完食しました。
この光景あるある~!
こどもが泣いた時にママはさっと動いたように見えましたが、今日はパパがいるので、「気づいてくれるかな」と思って反応を遅くしたそうです。
録画したものをあらためて見て、パパは「自分はこんなふうなんだ」とビックリした様子でした。無意識だったんですね。
夫の反応の遅さ → ママをイライラさせる
赤ちゃんの泣き声に対する反応の速度は男女で違うことが、ある実験で明らかになっています。
赤ちゃんの泣き声とノイズを聞いた時の反応の強さを見る実験です。
女性が泣き声に強く反応したのに対し、男性は泣き声もノイズも同程度の反応でした。
さらに、もうひとつの興味深いことが…
ママに自分の子どもの泣いている映像を見せる実験です。
映像見たとたん、ママの脳では次のことが起こりました。
愛しさ、不安 → 原因を分析 → 体を動かす(あやす)
この3つの処理が即座に行われました。
特別な脳の回路ができているのです。
ママは、もともと赤ちゃんの泣き声に反応しやすい素質があるのに加え、特別な脳回路ができあがったことで、すばやく対応することができます。
しかし、パパにはそれができない。
例えると、短距離走の選手が一般人と競争して「遅いだろうとは思ったけど、遅すぎる!」とイライラしているようなものでしょうか…?(これは私の勝手な解釈で、番組で紹介されたものではないです)
この脳の違いが育児ストレスを引き起こす一因になっています。
パパにはできないの?
もう1人のパパゲスト・ユージさんは0歳~12歳のお子さんがいます。積極的に育児にかかわっているユージさんは、夜間の子どものあやしを担当しているそう。今では、赤ちゃんの泣き声や身じろぎで、はっと目が覚めるようになったとのこと。
男性も脳をきたえられることが実験でわかりました。
育児経験のない男子学生に、週1回2時間の赤ちゃんの世話を3か月続けてもらいます。(前回はこの実験を女子学生にやってもらいましたね)
その結果、赤ちゃんと接しているときに活性化する脳の部分が増えました。
男性も育児に参加することにより、脳をスキルアップすることができるのです。
男性もオキストシン出せる!
パパが15分間わが子と触れ合った後に血液を調べると、オキストシンが放出されているという実験データがあります。オキストシンは、愛情ホルモンと呼ばれることが多いのですが、「子育てをするためのホルモン」なのだそう。
誰でもいいわけではなく、この愛情は、家族に対してのみ向けられるもの。
さらにうれしいことに、パパと触れ合った後は、子どもの体内でもオキストシンが出ていました。
つまり、パパに対して愛情を感じた、父子のきずなが深まったということ。
HOW TOっぽく言うと、「パパが赤ちゃんに好かれる簡単な方法。15分間抱っこしてみよう!」ですかね。
浮気防止のはたらきも
なんとこのオキストシン、浮気を抑制する効果もあるそうです。独身女性が正面から男性に近づき、どこまで距離を詰められるか、という実験をしました。これ以上近づいてほしくないと思ったら、男性が「ストップ」と言います。
オキストシンスプレーをふりかけた男性は、スプレーなしの男性よりも、早い段階でノーを出しました。
魅力的な女性がいれば、男性は本能的にフラフラとなってしまうもの。
オキストシンがあれば、夫婦の関係を安定させようとして、その衝動を抑制してくれるんですね。
浮気防止ホルモン?!
他の女性に魅力を感じて困っちゃう、というパパは、こどもと触れ合う時間を増やすと誘惑を断ち切れるかもしれませんよ。
最後に
700万年続けていた習慣が通用しなくなって、今までにない難しい環境に置かれているようです。私たちは岐路に立たされているのかもしれませんね。
ママも苦しみ、パパもまた苦しんでいるということが、この番組を通して客観的にとらえることができました。
29日再放送!
今夜、再放送します。見逃したかた、もう一度見たい方はぜひどうぞ!
NHK総合
2016年3月29日(火)24時10分~
NHKスペシャル「ママたちが非常事態!?2~最新科学で迫るニッポンの子育て~」公式サイト
ママたちが非常事態!? 2 ~母と“イクメン”の最新科学~